今回は、「映画サークルを結成し、レンタルスペースを借りて、サークルメンバー内で映画を視聴したいのだけれども問題ありますか?」というご質問をいただきましたので、著作権料が発生しない映画上映会の開催方法について、「空吹きチャーリー亭」運営事務局スタッフが解説します。
そこで本日の記事は、
- 地域の映画好きが集まって映画上映会を開催したいけれど著作権が心配
- 映画好き仲間とサークルを結成して一緒に映画を見たいけれど法的に問題あるの?
- 著作権者への許可が不要で著作権料が発生しない映画上映会の開催方法を教えて!
という悩みを抱える人向けの記事になります。
この記事を読むことで、
|
この記事の発信元について
では早速、著作権料が発生しない映画上映会の開催方法について、深堀解説をしていきます。
Table of Contents
ToggleQ1 著作権者の許可を得ずに著作権料も発生しない映画上映会は法的に可能?
本記事の執筆にあたり、著作権法等の原文確認、既存のインターネット等に掲載されている情報の整理、また一部所管行政庁に問い合わせを行った結果、結論から言いますと、下記の条件を満たす場合の映画の上映会は、法的に問題なく開催可能と判断できます。
|
しかし、本記事をご覧いただいている方の個別の事例への適用については、最終的に自己責任でご判断いただき、不安がある方は公益社団法人著作権情報センターの電話窓口にお問合せください。
Q2 「公に上映」とはどういう場合か?友人同士での視聴、特定少数であるサークルメンバー内での視聴も「公に上映」となるのか?
映画における著作権が及ぶ権利として「上映権」がありますが、この上映権は著作権法第22条の2で、「その著作物を公に上映する権利」と定義されています。
「公に上映」とは、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として、映画館やそれに類する施設などで上映する場合となります(著作権法第22条・第22条の2)。
「公衆」とは、不特定多数はもちろんですが、特定かつ多数の者を含む(著作権法第2条第5項)と定義されています。
このため「特定少数」は公衆ではないと判断できます。
すなわち、営利を目的としない、「友人同士での視聴、特定少数であるサークルメンバー内での視聴」は、「公に上映」にはあたらず、上映権が及ぶ対象ではないと言えます。
ただし、営利を目的とした場合には、「公の上映」に接触する余地が生まれますので、ご注意ください。
参考として、文化庁「著作権Q&A」では、以下のとおり「公に上映」についての解説が掲載されています。
Q3 「非営利」「無料」「無報酬」での上映とは具体的にどういう場合?
著作権法第38条に該当する場合、すなわち「非営利」「無料」「無報酬」の上映であれば、著作権に接触することなく、上映会を行えると規定されています。
著作権法第38条(営利を目的としない上演等) 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。 |
ポイントは
- 営利を目的とせず(非営利)
- 観客から料金をとらない(無料)
- ただし、出演者などに報酬を支払う場合はこの例外規定は適用されない(無報酬)
となり、具体的に解説しますと、「非営利・無料・無報酬」とは、上映会の開催によって一切の利益を得ない、以下のようなケースをいいます。
- 入場料など一切の料金が発生しない
- 出演者などに報酬が支払われない
以下のような場合は、たとえ「無料」でも違反となりますので十分にご注意ください。
- 営業や販売の一部として行う
- 宣伝や集客のために行う
- イベントの一部として上映会を企画。上映会は無料でもイベント参加に料金がかかる
Q4 「上映権」だけじゃない!「頒布権」とは何か?
映画の著作権の1つとして、「上映権」とは別に「頒布権」というものがあります。
頒布権(はんぷけん。著作権法第26条)は、映画の著作物に関する「譲渡」と「貸与」に関するルールとなります。
|
なお、頒布という聞きなれない言葉は、映画の著作物などを公衆に譲渡又は貸与することをいい、法の定義は以下となります。
|
頒布権は、映画の複製物を有償又は無償で公衆に提供する行為を含みます。
著作権法第2条第5項の定義から「公衆」とは、「特定かつ多数の者を含む」とされていることから、頒布権は特定少数のみでの上映には適用されないと解釈できます。
しかし、著作権法において、頒布権は特定少数の相手に対して譲渡又は貸与する場合でも、公衆への上映を目的としている場合には権利が及ぶとされています。
このため、映画サークルなどの特定少数の任意団体に頒布権が適用されるかは、最終的な上映の範囲があくまでサークルメンバー内の特定少数で上映するのか、多数の者を含む公衆への上映が目的なのかで変わってきます。
頒布権は、他人が無断で映画の著作物を販売やレンタルする行為を防止するために存在します。
頒布権には譲渡に関する部分があり、一度適法に譲渡された後は消滅するという規定がありません。
つまり、頒布権は非常に強力な権利であり、著作権者にとって重要な保護手段となっています。
「映画サークルが非営利で映画上映会を行う場合」には、前述の著作権法第38条(営利を目的としない上演等)により基本的に問題ないと解されますが、頒布権により譲渡や貸与が制限されるため法律に接触するケースが発生します。
レンタルDVDでの上映会NGや、本来は業務用DVD(著作権料支払い済)での上映会が望ましいなどの現象は、頒布権の運用が曖昧なことが原因となっています。
このため、上映する際に使用する映画の再生元が、レンタルであったり、オンライン動画配信サービスであったりすると頒布権が適用される可能性がありますので、次のような行為は特定少数での私的上映であっても行わないようにしましょう。
【映画DVD等に関するNG行為】
- レンタルDVD(個人使用のみ許可分)やオンライン動画配信サービスでの上映会
- 複製(ダビング等)DVDを貸す行為(肉親や友だちでもNG)
- 録画した映画の上映会
- 映画館などに類する施設での非営利上映会(業務用DVDが必要)など
Q5 不特定多数の参加を募るのではなく、映画サークル内の特定メンバー内で市販のDVDを使用して映画を見ることは可能?サークルメンバー数の制限はあるの?
「非営利・無料・無報酬」であれば、映画サークル内の特定メンバー内で市販のDVDを購入して映画を観ることは可能です。
ただし、サークル名称などは、「映画の意見交換会」や「映画について語る会」など、上映そのものが目的の上映会よりも意見を言い合うことがメインのようにしておいた方がより安心です。
サークルメンバー数の制限は、何人までOKとは明確に定めがありませんが、10人程度で問題になったケースは確認されていないそうです。あくまで常識の範囲内ということになります。
また、購入したDVD代金は、サークルメンバー内で割り勘などにしても問題ありません(実費の負担は、営利とはみなされないため)。
Q6 レンタルスペースを借りて映画サークルメンバーで映画を視聴する際に、レンタルスペースの利用料は参加メンバーから割り勘で徴収したいのだけれども問題ない?
レンタルスペースの利用料は、参加メンバーから割り勘で徴収しても問題ありません。
購入DVD代金の割り勘と同様に、実費の負担は営利とはみなされないためです。
DVDを見るときに、みんなで飲食するジュース・お菓子を購入して割り勘にするのも大丈夫です。
ただし、上映会主催者などが、上映会を無料にして、代わりに飲食などを販売するのはNGです。
よくある例でいうと、カフェなどが映画上映会を主催して上映会は無料だが、代わりに1ドリンク注文が必要などにすると、営利営業となりNGとなります。
まとめ:著作権者の許可を得ずに著作権料も発生しない映画上映会の開催方法
最後に、冒頭の結論を再掲しますが、著作権者の許可を得ずに著作権料も発生しない映画上映会の開催方法としては、以下の条件となります。
|
さらに、運用のポイントを再度お伝えします。
- 録画DVDやレンタルDVDは、避けておいた方が安全です。録画DVDは法律的にNG、レンタルDVDはレンタル店との契約でNGとなります。
- Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスなども利用規約でNGとなります。
- 購入DVDも厳密にいえば、「業務用DVD」利用が最も安全ですが、一般DVDでも10人程度の非営利利用であれば問題になることはないようです。
- 非営利であれば、購入DVDやレンタルスペース代、飲食物の割り勘はOKです。
- 「空吹きチャーリー亭」などのレンタルスペースを会場にして、サークルメンバーで上映会を開催して、楽しくおしゃべりなどもルールを守れば可能です。
なお、本記事をご覧いただいている方の個別の事例への適用については、最終的に自己責任でご判断いただき、不安がある方は公益社団法人著作権情報センターの電話窓口にお問合せください。
【参考】映画上映の著作権に関する関連サイト
- e-GOV法令検索「著作権法」
- 文化庁「著作権Q&A」
- 文化庁「著作物が自由に使える場合(第38条)」
- 文部科学省「映画の著作物の非営利・無料の上映に関する考え方」
- 公益社団法人著作権情報センター「著作権が制限されるのはどんな場合?」
- 公益社団法人著作権情報センター「電話窓口」
空吹きチャーリー亭は、地域の身近な仲間同士の学びの活動を応援するレンタルスペースです。お試し利用も可能ですので詳細については、適宜お問合せください。
また、毎月第4日曜日はOPENDAYと日曜フリマです。ぜひお散歩のついでにお立ち寄りいただき、空ちゃの中をご覧になってください。
それでは、明日以降のあなたの活動が、より充実したものになるよう祈っています。
Instagram「@solafuki_charlie_tei」とTwitter「@solacha_jp」も更新していますので、是非ご覧ください。
この記事の発信元について
なお、本記事で執筆した情報につきましては、閲覧者様に損害・不利益等が発生しないよう正確な情報をお伝えするよう注意を払っておりますが、その内容の完全性、正確性、有用性等について保証をするものではありません。
したがいまして、閲覧者様が当該執筆情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対して、本施設(空吹きチャーリー亭)はいかなる責任も負いませんので予めご了承ください。